The Drumming of ”Beat Music” Generation 〜カテゴリ別考察:HIPHOP, SOUL編〜

モダン・ドラミング以降の新世代ドラミングを考察、研究する試みエッセイです。
これは「概要記事」に対する詳細記事になります。


*HIPHOP, SOUL編で紹介するドラマーたち
Chris Dave
Cleon Edwards
Corey Fonville
など(追加するかも)

※お断り
この文章は全て私の主観的で独断的な判断、考察、研究をもとに書かれております。そのため、事実と異なる部分や間違った情報が存在しうることを予めお伝えしておきます。ドラムという楽器の1つの考え方として軽い気持ちで読んでいただければ幸いです。「ここはこういう考え方もできると思う」「ここは完全に間違ってるよ」と言ったご意見はソースと共に教えて頂けると大変助かります!

 


⑴Chris Dave
HIPHOP, SOULの流れといえばまずはこの人!J DIllaビートなど、打ち込み由来のグルーヴをほぼ完璧に再現し、世に広めた功績は計り知れないと思います。
▼Chris Dave and Drumhedz
彼がリーダーを務めるメインバンドです。DJミックスをバンドで再現している感じです。
3:30からの曲は、Slum Villageの「Conant Gardens」のリフの上に別テンポでMiles Davisの「Nefertiti」を重ねる、というまんまDJのミックスみたいなことをしています。
Slum Village / Conant Gardens
Miles Davis / Nefertiti
▼このバンドの雛形と思わしきセッション
Thelonious Monkの「Criss Cross」を突然別のテンポでブチ込んでます。Drumhedzの雛形っぽいですね。
Chrisはグルーヴ、パワー、テクニックどれもすごいのですが、個人的にはDJやMPCの作る音への理解度とリスペクトがすごい人だなと感じています。モダン・ドラミング以降のスーパーな演奏技術でもって、自分の敬愛する音像を再現する、というアツいドラマーです。
▼J Dillaの重要性
Chris DaveといえばJ Dilla!この動画はJ Dillaの作ったトラックが詰まったアルバムです。初っ端からヨレたビートが気持ちいい。曲名が「It’s Dope」で、ほんとその通りですね。本来なら音楽的に「不安定/ヨレている」と言われてしまいそうなドラムのビートですが、これが一定周期でループされると超気持ち良いグルーヴになるんですね。このスタイルを編み出したJ Dillaのグルーヴ革命っぷりときたら。Chrisは彼を心の底からリスペクトしているんだと思います。
▼Wutcha DO
Chrisが叩いているJ Dillaリスペクトなトラック。気持ちいいです。完成度高すぎます。もちろん一定のロジックはあるような気もするのですが、Richard Spavenのブロークン・ビートと比べると割と感覚的にズレ感を演出しているような気がします。
▼「J DillaがいかにしてMPCを人間ぽくしたか」
VoxというチャンネルがJ Dillaを取り上げた回。解説がわかりやすく、動画もよくできていて面白いです。Chrisの出す音がまんまなのがおわかりいただけるかと。動画内で参照されている?uestloveの動画もぜひチェックしてみてください。
▼Chrisの音がよくわかるもはやASMRな動画
Chrisのドラミングが細かく見れるファンにはたまらない動画。ハイハットのベロシティ感や、ドラムセットのサウンドメイクに注目です。MPCで作ったような音を再現しているのだと思うのですが、抜群の再現性です。絶品。
▼Miguel Atwood-Ferguson EnsembleではBrainfeederサウンドを再現
BrainfeederアーティストのMiguel Atwood-Fergusonのアンサンブル。Brainfeederのサウンドを弦楽器も交えて再現してます。まさしく”Beat Music” Generationな音楽です!ベースはThundercat。Chrisはサウンドメイクの観点からもHiphop版の次世代Jojo Mayer感がありますね。
▼Chrisの昔のクラブでの演奏
客席でTaylor McFerrinJojo Mayerが見てたり、彼らの繋がりを感じるワンシーンです(1:21あたりから)。この動画から僕は色んなことを学んだ気がします。Chrisの動画で一番好きかも。
▼Robert Glasper Trio
この動画ではChrisもジャズテイストですが、突然MPCみたいな音をパツッッ!て入れるのが新感触です。
やはりRobert Glasperは絶対外せないところ。ジャズフォーマットにヒップホップを持ち込んだビッグネームです。G&Bを演奏している11:30あたりのところでまんまSlum Villageの「Fall in Love」をサンプリングみたいにぶち込んでますね。”Beat Music” Generationに「ヒップホップをテーマにセッションする」という大きな流れを作りました。
Double BookedとBlack Radioはグラスパーとの活動の結晶体みたいな2枚です。僕の人生もこの2枚でだいぶ変わってしまった感があります。
Slum Village / Fall in Love

 


⑵Cleon Edwards
マニアでない方は「え?誰?」という感じかもしれませんが、彼は次世代を担うスターだと思うので取り上げます。RC and the Gritzのドラマーで、Erykah Baduのドラマーとしても活動してたりします。
▼界隈でバズった激ヤバドラムソロ
まずグルーヴがすごいです。叩きまくりなのに軽さが全然なくて、めちゃくちゃ拍にグリップしてます。そして、ゴスペル経由のリニアでメカニカルなフレージングながらものすごく歌っている。チョップスでこんなに音楽的にできるのか、と驚きを隠せない。バックもSlum Villageとか大好き感がビンビンのベースで超グルーヴ。そして、横からだとわかりづらいかもしれませんがセッティングがクレイジー。スネアドラムがある位置にフロアタムも一緒に置いてしまって、スネアとフロアがピッタリくっつくという、、、。ギリギリできなくもないのですが、かなり腰回りのガタイがないと辛いセッティングです。
▼RC and the Gritzでのドラムソロ(ドラムアングルで見やすい)
セッティングほんとやばい。ソロもやばい。音も今っぽくてかっこいい。めちゃくちゃ痺れます。
Cleonの魅力は
・Steve Gadd的なベタッと吸い付くグルーヴ
・ゴスペルチョップス的フレージング
・Chris Dave的サウンドメイク
・クレイジーなセッティングとそれを活かし切ったプレイ

というものなのかなと感じています。
彼のような質感は”Beat Music” Generationじゃないと出てこないものだと思っています。こういうフレーズとサウンドがそれ以前には流行ってないのです。
Justin Brownがジャズルーツのゴスペルチョッパーなら、こちらはネオソウルルーツのゴスペルチョッパーとでも言うような、新しい感性のドラマーです。
▼Dallasのバーでのギグ動画。謎が多いのが魅力な動画。
これは割とジャズっぽい感じでやってますが、Cleonらしいベタっとしたグルーヴと、いかにも”Beat Music” Generationな現代的な歌い回しが気持ちいいです。曲もメンバーもかっこいいのですが、いかんせん情報がなさすぎてこのギグが一体なんなのかわからない。

補足)Snarky Puppyとの関係

彼はたまにSnarky Puppyのトラをやっていたみたいで、これはFloodを演奏している動画です。タイトかつ深いグルーヴでバッチリ踊れる7拍子に仕上がってます。ベースのMichaelがたまに不服そうなのが見どころです。Cory Henryとはここで出会った繋がりか、CoryのリーダーバンドであるThe Funk ApostlesにCleonもドラムで参加しています。

 


⑶Corey Fonville
彼はジャズの流れが強いのでどう紹介するか迷いますが、グルーヴに注目がいくドラマーだと思うのでこちらで取り上げます。
Nicholas PaytonやChristian Scottと言った比較的ビートの効いたジャズをやっているプレイヤーのバックで名を馳せたドラマーです。まずはその実力を!
▼Nicholas Paytonとの動画
プッシュ感が強くもっちりファンキーなグルーヴでかっこいいです。この動画だとかなりジャズですね。フリーソロをやっていても重めのグルーヴが感じられて、否が応でもグルーヴに気が行きます。
▼Butcher Brown / Cactus
こちらは彼が力を入れて活動しているバンド、Butcher Brownの「Cactus」という曲。ファンキーで爽やかでメロウで素晴らしいバンドです。Coreyの持ち味であるグルーヴが爆発してて幸せな気持ちになれます。3:35〜のシンバルがかっこよすぎ。
Coreyはローファイで温かみのある音作り正統派ファンキーな演奏が、ネオヴィンテージって感じです。70〜80年代ソウルを現代に甦らせたような感じで、それが一周回って新鮮に聞こえるという印象です。DJカルチャーやサンプリングが一般的になり、トラックの元ネタとしてこの年代のソウルが使われていたりすることもあるので、そういうところからCoreyのこのスタイルは作られたのかもしれません。
▼Donald Byrd / Think Twice
超メジャーなソウルの名曲ですね。この質感がCoreyにはあると思います。
▼Erykah Badu / Think Twice
”Beat Music” Generationには外せないネオソウルクイーン、Erykah Baduもやってます。よりドープに、今っぽく。
▼A Tribe Called Quest / Footprints
A Tribe Called Questもこの曲でThink Twiceをサンプリングで使ってます。(0:10〜のフワ〜という音はThink Twiceの5:07〜あたりの音)
思いっきりStevie WonderのSir Dukeだし、CoreyをはじめとしてHIPHOP, SOUL文脈の彼らにはこの年代のグルーヴが自然と身体に入っているんだと推測してます。